運動でガンを予防する
日本人の死因は、戦前までは結核などの感染症による死亡が多かったのですが、1955年以降はガン、心疾患、脳血管疾患が死因全体の6割以上を占めるようになりました。ガン・脳血管疾患・心臓病などの占める割合は高齢になるにつれて高くなっており、今後ますます高齢化が進むと、さらにこれらの疾患に罹る割合が多くなることが予想されます。
これらのことから、運動はガンの発生を予防できる可能性があるものの、いったいどの程度の運動がガンの予防に有効なのか現在のところよくわかっていません。しかし、ガンの予防には適度な運動や休養、さらには最近話題の赤ワインやビタミンC、E、Aなどをはじめとする抗酸化食品の摂取など、これらの適切な組み合わせがポイントのようです。
ガンの欧米化
ガンは日本人の死亡率の1位を占めていますが、ガンの発生部位が年々欧米化してきています。これまで多かった胃ガンや女性の子宮ガンは低下する傾向にありますが、代わって肺ガンや大腸ガン、乳がんが増加してきています。これらの原因のひとつには、食生活の欧米化や運動不足、喫煙などが考えられています。
身体活動量とガン
最近の疫学調査では身体活動量の低い人ほどガンの罹患率が高く、部位別には特に大腸ガンや女性の乳ガン、子宮頚部ガン、男性の前立腺ガン等との関係が明らかになりつつあります。また、肺ガンと身体活動量との関連を認めた報告もあります。アメリカのBlair博士によると、有酸素的体力(心肺持久力)から見た場合、低体力者ほどガンの罹患率が高いと報告しています。
運動がガンに効果的!?
- 大腸がん
- 運動が大腸ガンの発生を抑える機序として、運動が大腸内の内容物の通過を促進するので、発ガン物質と大腸粘膜の接触時間が短くなることから大腸ガンに罹りにくいと考えられます。
- 睾丸ガン・乳ガン
- 性ホルモンやプロスタグランディンというホルモンの過剰分泌が、それぞれある種のガンの発生に関わりがあると考えられており、運動はこれらホルモンの過剰分泌を抑制する事が知られています。
例えば、ジョギングを習慣的に行っている人たちの男性ホルモンは、運動習慣のない人に比べて少なく、このことが、ガンの発生を抑制しているのではないかと考えられています。
また、女性ホルモンであるエストロゲンの過剰分泌が子宮ガンや乳ガンに関わっていると考えられており、これらの予防には、特に初経や閉経年齢時点での運動が有効であるといわれています。
活性酵素とガン
ガンの成因のひとつとして、活性酸素によるDNAの損傷が考えられています。空気中の酸素(21.09%)が体内に取り入れられると、その中の2〜3%が酸素毒となります。しかし、地球上の全ての生き物は、この活性酸素から身を守る抗酸化酵素を持っており、中でも、定期的な持久的運動は抗酸化酵素活性を高めると言われています。さらに、持久的な運動はガンの発生・増殖を抑制する免疫機能も高めると言われています。しかし、運動もやり方しだいでは、逆に活性酸素を過剰に産生したり免疫機能を抑制したりしますのでガン発生の誘因になる可能性も否定できません。
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