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骨と健康

わが国の平均寿命は、生活環境の改善や医学の進歩などにより著しく伸びてきました。そして、健康長寿や生活の質を向上させる願望が益々望まれるようになってきました。
しかしながら、平均寿命が伸びている反面、一方では介護保険や老人医療費、寝たきり人口の増加など様々な問題を作り上げています。
さて、寝たきりの原因には内科的、整形外科的などいくつかの原因がありますが、脳血管疾患に関しては、精力的に保健・医療対策が取られてきたことから、近年では脳血管疾患による死亡者数は減少しているようです。
しかし、ここ数年話題となっているのが、骨粗鬆症による原因です。
1987年に発生した大腿骨頚部骨折患者数は全国で約53、000人でしたが、1992年には約77、000人と1.5倍に増えているとの報告があります。
また、高齢者の寝たきりの原因は、骨折・外傷を原因とする割合が、1985年は7.4%、1990年には10.8%、1995年には11.5%と寝たきり高齢者に占める骨折・外傷の割合が増加してきています。



骨粗鬆症と骨の代謝

骨は、カルシウムの最大の貯蔵庫であり、常に活発な代謝が行われています。骨形成の代謝回転(ターンオーバー)は、まず、破骨細胞によって骨吸収が起こり、その後に骨芽細胞によって骨形成がなされます。
破骨細胞と骨芽細胞の働きは、休止期では、破骨細胞による骨吸収が停止し、逆転期では骨を形成します。
閉経後の骨粗鬆症には骨吸収形成のターンオーバーが亢進しますが、老化に伴う骨粗鬆症では、骨吸収形成のターンオーバーが低下してきます。
ですから、骨粗鬆症の予防や治療には、いかにして破骨細胞を活性化させ、骨の形成を促進するかが重要になります。


骨粗鬆症の診断と予防・改善

骨粗鬆症の診断の基本的検査はX線撮影です。しかし、検査機械や検査部位によって基準値が異なっており、どこで正常・異常を決定するかどうかわからということもありますので、骨量の減少の有無で診断されます。
骨粗鬆症は、生活習慣の改善による予防や改善が期待できます。大きく分けると「食事」と「運動」です。

食事
まずは、食事からカルシウムとカルシウムの吸収を促進させるビタミンDを摂取することです。ビタミンDは日光により活性型になります。
日本人のカルシウム摂取の目安量は1日600mgとされています。しかし、1992年の調査では590mgしか摂取できていません。カルシウムを摂取するには、牛乳が特にいいとされており、牛乳200ccには200mgのカルシウムが含まれていますので、理論的には、牛乳600ccで600mgのカルシウムの摂取になります。
運動
宇宙飛行士が無重力状態の宇宙空間に長期滞在しますと骨密度が低下することは良く知られたことです。すなわち、骨は機械的な刺激によって形成されるということです。
運動は骨密度に影響を及ぼしますが、運動の種目で違いがあるのでしょうか。
図は、運動種目別にみた骨密度ですが、男性、女性とも運動選手のほうが運動をしていない人より高くなっています。特に柔道や球技などは強い衝撃を伴う運動であり、これが骨密度を高くすると考えられています。水泳選手のように力負荷が乏しい種目は骨密度が低くなっています。
一方、長距離選手の様に強い重力負荷がかかる種目であっても、骨密度が低い場合があります。
それは、特に女性の場合、体脂肪の減少と女性ホルモン(エストロゲン)の低下による骨吸収の促進が考えられており、女性ランナーの疲労骨折が多いことからも推測できます。
ところが、ジョギング愛好家程度であれば、反対に骨密度は高くなっています。
この様に、運動は種目や実施度合いによって骨密度に様々な影響を及ぼしますが、基本的には、運動は骨密度を増加させる働きがあります。
運動種目別にみた骨密度(男性) 運動種目別にみた骨密度(女性)


運動と骨動態

運動が骨動態に及ぼす影響は、対象の年齢、性、運動の種類、強度、頻度、期間などに左右されます。通常、加齢による骨量減少は年間1%で、閉経後は年間2〜3%と言われています。
しかし、ベッドなどに寝たきりになり全く動かない状態になりますと、骨量はわずか1週間で1%も減少すると言われています。
骨量の減少は運動量の減少で顕著に現れますが、骨形成はすぐにできません。
個人差もありますが、例えば3カ月間のトレーニングでも骨量の増加がなかったとする報告もあります。