歯周病と動脈硬化
歯周病とは
(図1)
歯周病は、細菌によって歯の周りの組織が炎症をおこし進行する感染症です。
口の中には300種類以上の細菌が存在するといわれ、その中で歯周病の原因となる細菌を“歯周病菌”と呼びます。歯垢(デンタルプラーク)は細菌の塊で、歯垢1mg中には1億個以上もの細菌が存在しています。(図1)
(図2)
歯と歯ぐきの間にある溝(ポケット)に歯垢が溜まると歯ぐきが炎症を起こし、溝が深くなり“歯周ポケット”が形成されます。やがて歯を支える骨を溶かし、最終的には歯が抜けてしまいます。これが“歯周病”です。(図2)
歯周病菌が動脈硬化に関わっている!?
動脈硬化とは血管が厚く硬くなり血管が狭くなる病気です。
その“動脈硬化”の病巣から歯周病菌が検出されているとの報告があり、5種類の歯周病菌が動脈硬化を起こしている血管から見つかっています。これは、歯周病菌が歯肉から血管内に入り、歯周病菌が産生する内毒素や歯周病巣で産生された炎症性物質(サイトカイン)が原因となって、血管に炎症を起こし、血管そのものを硬化させたり、血栓を形成するように働いて動脈硬化を進行させると考えられています。
また、歯周ポケットが深くなるほど血液中に侵入する歯周病菌が多くなるという結果報告もあります。
現在のところ、歯周病は動脈硬化の発生そのものとは関係ないと考えられますが、動脈硬化が冠状動脈で起きた場合、症状悪化の要因となることを示すような結果が出ています。
歯周病が進行すると
歯周病が進行すると
歯周ポケットから歯周病菌が血液中に侵入
動脈硬化を起こしている血管に歯周病菌が感染
歯周病菌や歯周病菌が産生する内毒素、サイトカインが
血管壁に炎症を起こし、血管を狭める作用を促進
動脈硬化が進行
動脈硬化をおこした血管(壁)から歯周病菌が見つかった人の割合
4mm以上の歯周ポケットの数
歯周病が血管に作用して動脈硬化を引きおこすと考えられる根拠として、実際に動脈硬化をおこした冠動脈の血管の壁から歯周病菌が見つかっています。
重度の歯周病患者の方が発見率が高いこともわかっています。
※歯周ポケットが4mm以上とは、軽度以上の歯周炎
歯周病の全身への影響
最近、歯周病は口の中だけではなく誤嚥性肺炎、糖尿病、早産低体重児出産など全身とも深く関わっていることが明らかになってきました。歯周病菌が産生する内毒素や代謝産物は歯周ポケットから血液中に侵入し全身に影響を及ぼす可能性があります。このようなことから口の健康を維持することは大変重要です。歯周病の予防や早期治療のため定期的に歯周病チェックを行いましょう。